『Eccentric Love』











「今、お前が考えているより、カレギアの玉座は私の近くにある。手段やタイミングはどうあれ、それは間違いなく可能だ。さっきの下らん噂のように、単に周 りの思惑に流されてそうなるのではなく、私の意志として、いずれそうすることになる。…そしてそうなればあらゆる権力が手に入る。自動的に『王の盾』は私 の直属になる。すなわち、お前は私の部下になる。…生かすも殺すも、私の意向次第。」

「…冗談でしょう?、まったく何を言い出すのやら。」

「権限として『四星のサレ』を拘束して独占できる、それだけでも考 える価値のある、悪くない話だ。例えばお前とこうやって会うことひとつとっても、今のように、いちいち形式踏んだ煩雑な手続も不要になる。どこの誰も介す ることなく直接呼び出せる。…お前の任務は全て私が決められる。」

「…ちょっと。」

「一度呼び出したら、…そうだ、鎖に繋いでケースに閉じ込めて、この部屋から一歩も出さない。」

「…あのねえ。」

「『嵐』のフォルスも封じる。剣も持たせない。誰とも会わせず、何もさせず、お前は日がな一日、私だけを見て私のことだけを考えればいい。」





















 
「馬鹿馬鹿しい、ホントにくだらない!。それって今思いついた即席の嫌がらせでしょう。調子に乗りすぎだよ。特権をいいことにすぐに人を支配下に置こうとするその貴族特有の傲慢ぶりが一番嫌いだと何度言えば…、」

「悪いが本気で、そうすることができればと思っている。そして、私が私である以上、それなりの確率でそうなる可能性もあるということだ。お前の方こそ現実を見たらどうだ。自分の立場を考えてみるいい機会かもしれないじゃないか?。」

「…それって僕に死ねってこと?。」

「考えようによっては、お前にとってもそれほど悪い話ではない。私の庇護を受けて、ただ存在していればいい。王の盾の『四星』を辞めれば、命の危険も冒さ なくていい。誰とも争わず、ただ平穏と安息の中に身を置いて、お前はここで、只、笑っていればいい。過去からも、拘束するものからも全てから解き放たれ て、全く別の人間に生まれ変わるようなものだ。」

「…そんなの無理だって。分かっているでしょう?。…僕は閣下のために生きられないって。悪いけど、他あたってよ。それに僕は閣下とそんな話をしたくない よ。…ほら、何の話だっけ。ラドラス様の容態だよ。現実問題としてあの方はもう長くない。種族共存や相互理解を理想として掲げてきたのがこの国だけど、皆 本気でそう信じているわけじゃない。実際、陛下亡き後この国の後釜を狙う輩は多い。…混乱は避けられないよ。」

「…お前は大丈夫なのか。」

「僕が?。自分の身を守れるかって?。まったく誰に向かって言っているのさ。閣下には悪いけど、イデオロギーが無いってことはすごく身軽なんだよ。 どっちに転んでもゼロ以下にはなりようがないからね。」

「ならばいい。」












もうじきこの国に大きな変化の波が来る。
僕はその波に呑まれることになるかもしれないけど。














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