『花(中編)』 







 

 ミルハウストの私室は広く、灯がともされて明るかったが、ここに来るといつも独特の寒々しさを覚えた。
 正規軍を統括する将軍の地位にあり、なおかつ、その王家と縁戚にあるという出自に相応しく、部屋の家具も調度品も全て王宮から特別に用意されたもので、 内装もかなり金のかけられたものであることが一目で分かる。
 しかしミルハウストがそれらに全く頓着しないため、例えば精緻な彫刻が施された燭台など、一度も使われた痕跡がないまま、忘れられたように部屋の隅の暖 炉の上に置かれている。
 主に愛着を持たれない哀れな調度品が点在しているような印象を覚える部屋だった。
 常に合理性を優先するミルハウストは、壁に絵を飾ったり、まして気に入りの小物を置いたりするようなことも一切しない。
 広く凝った造りのその部屋は、まるで豪華なモデルルームのようだった。

 部屋に入るなり、さっさとバスルームの方に消えていったミルハウストの背中を見て取ると、サレは、ふう、と小さく息をつき、なんとはなしに、広い室内を 見渡した。
 部屋の壁際には、大理石のテーブル付きの可動型サイドボードが寄せられていて、その上に、高級品のコーヒーカップが二人分きれいに洗われ、いつでも使え るように準備されている。
 部屋の広さも造りも、備え付けられた調度品も。それらを見るだけでも、ミルハウストはこの王国の中にあって、つくづく別格で、どこまでいっても所詮自分 とは天と地ほどの差がある人間なのだと思い知らされる。

 広いメインの部屋から一つ扉を隔てて、奥に、東に面した小さな部屋が一つあり、これがミルハウストの書斎だった。
 フローリング敷きの狭い部屋だったが、この書斎だけは、先程のメインの部屋とは異なり、ミルハウストの私物でひしめいている。
 この部屋には灯りがついていなかったが、隣室から灯りが差し込んでくるので、中の散乱ぶりが見て取れた。
 図面や、計算用紙のメモ書き、辞書や年鑑なども、床一面、至るところに折り重なるような乱雑さで散らばっている。
 おそらくこの部屋だけは、ミルハウストが誰にも掃除をさせないのであろう。
 デスク横の壁際には、仮眠用に使われている長椅子が置いてあったが、その上の散らかりようもひどいものだった。
 几帳面な印象のミルハウストからは想像もつかないその部屋の有様には呆れたが、それと同時に、どこか快哉にも似た感情が沸き起こる。
 ミルハウストは、カレギア国軍の長であり忠誠心に溢れた将軍である外の顔と、内面に焔のような野心を潜ませた『支配者』である実の顔とを巧みに使い分け ている。
 外では将軍であることに徹底するが、この部屋に入ればミルハウストは『実の姿』に戻る。
 日々、職務が退けた後、この書斎に篭ったときのミルハウストが何を考え、頭にどんな謀事をめぐらしているか、ミルハウストを目の敵にしている一部の重臣 たち や、貴族連中が知ったら、さぞかし腰を抜かすほど驚き、縮み上がることだろうよ、とサレは思う。
 この書斎の存在は、ミルハウストという、極端な二面性を持つ人間の本質、そのものだった。

 デスクの前の大きな窓には、夜だというのに鍵が掛かっておらず、わずかな隙間が開いていた。
 そこから吹き込む風に、薄手の白いカーテンが揺れている。
 窓の取っ手に手を伸ばそうとすると、隣室の方からかすかに聞こえていたシャワーの水しぶきの音が止み、続いてガタリと浴室のドアを開ける音がした。
 その音に振り返ったとき、ドアのすぐ横にある書棚がサレの視界に飛び込んできた。
 書棚の中段あたりに、華奢なデザインの花瓶が置かれており、そこに花が一輪、生けられていた。
「…。」
 サレはその花を見た瞬間、浮かんだある連想のために眉を顰めた。
 それは白い花で、この乱雑で殺風景なばかりの室内にあって、そのたった一輪をもって、周囲の空間を柔和で優しく、そしてこの部屋に到底そぐわない異質な ものに変えていた。
 花の名前など知らないが、それはとても柔らかく、蝶の羽のような薄い5、6枚の花びらが、花粉をもったたくさんの細い雄しべをふわりとつつみこんだよう な花だった。
 反射的に手を伸ばして花に触れてみると、ほとんど抵抗感がなく、ひどく弱々しかった。
 誰かこの部屋に来たんだ。
 咄嗟にそう思った。
 思いはしたが、サレにとって、他人のプライベートなど、興味の無いものの最たるもので、それはミルハウストとて例外ではない。
 ただ、先程の豪華で美しいメインの部屋の方でなく、ミルハウストの真なる姿が隠されているこの散らかった書斎の方に他人を入れたのだということが意外 だった。
 まあ、今日の自分のように、ミルハウストを待つ間、隣室に興味を持ったもの好きな女でもいたのかもしれない。
 そう思った。
 けれど、花瓶の傍に添えられたカード型の紙片を見つけ、それに書かれた文字が、視界に入ってしまったとき、サレはそれを無視できなくなった。
 それは短い手紙だった。見る気は無かった。
 もとより他人あての私信のようなメッセージである。
 そのメモ書きのような手紙の一文が目に入ったとき、そして差出人の名を見たときサレの視線はそれに釘付けになった。
 花はまだ新しい。おそらく昨日かそこらに活けられたものである。
「…随分と手抜きじゃないか。え、将軍閣下、…いや、‘野心家のミルハウスト’。」
 思わずそう吐き捨てた直後、書斎のドアが開かれる音がした。
 突然、開いていた窓から突風が吹き込み、カーテンがばたばたとはためいた。
 机の上に乱雑に重なった図面などが強風に煽られて、派手な音をたててざわついた。
「…!。」
 ミルハウストは、あわてて室内に入ってくると、それらが吹き飛ばないように、デスクのところの書類を両手で抑え、続いて窓の取っ手を掴み、引っ張って、 その重いガラス窓を締めた。
「なんだ、突っ立ったままで。」
 いきなり背後から掛けられた声に、サレは、ぎくりとした。
「…。」
「明かりもつけないで、そんなとこで何をしているんだ?。」
 そう問われてサレは今、ミルハウストがどんな顔をしているのか見たくないと、そう思った。
 無難にやり過ごすミルハウストなど見たくはない。
 この漠然とした怒り。それは苛立ちのようなものであり、この部屋にいる自分も、そしてミルハウストも、あるべき現実にきちんと当てはまっていないよう な、馬鹿馬鹿しさを伴う欠落感がそこにあった。
「…窓くらい、閉めておいたらどうですか。…随分と無用心なんですねえ。」
 白々しい自分の作り声を耳の傍で聞いた。
 言われてミルハウストは、何のことかといったふうに、無言のまま、先程風でとばされた数枚の書類をデスクの上で整え、他の書類の上に折り重ねた。
 このとき、さっさと書斎から出て、先程の広いメインの部屋に戻ってしまえばそれで済んだのかもしれない。
 そして適当な言い訳を見つけて、自分の部屋に戻ってしまえばいいのかもしれない。
 しかし、ある一瞬、あるタイミングを外してしまったように、サレの視線が一瞬、もう一度書棚の方に向けられ、そして同時にミルハウストがサレの視線の先 にあるものに気づいた。
 それはほんの数秒間の沈黙だったのかもしれないが、その場に、二人の間を隔てる空間の中にある、どこか重苦しくねばついたようなものが、その沈黙を一 層、気味の悪いものにし、それがサレを拘束していた。
 どこか後に退けない気持ちがあり、サレはその場で動かず黙り込んだ。
 視線だけをめぐらすと、ミルハウストの顔は、少なくとも表面上においては、何も感情を乱すものがないかのように見える。
「将軍閣下。」
 沈黙に耐え切れなくなったのはサレの方だった。
「何だ。」
「…白々しい。何だ、じゃないでしょう?。僕に何か言うことはない?。閣下には、今、他にやるべきことがあるんじゃないんですか。」
「何のことだ。」
 切り捨てるようなその言葉にサレの怒りの焔が加速する。
 しかし内面を巧みに押し隠して唇の端に作りなれた冷笑を浮かべる。
「これだよ。これッ。ホラ、今夜あなたに会いたい、って書いてある。アガーテ様が、そう言ってる。ああ、言っとくけど、勝手に見るな、なんて陳腐なこと言 わないで下さいね。僕を部屋に入れたのは閣下であって、こういうものを無防備に置いておくのも閣下なんですから。」
 ミルハウストは表情も変えず、黙ったままサレの目の前に立ち、まっすぐにサレを見下ろした。
「…。」
 上から見下ろされて、サレはミルハウストの顔をきつく見返した。
 暗くて表情まではよくわからなかったが、それでも隣室から部屋内に入り込む明かりに照らされて、何かミルハウストの瞳に昏い光が宿っていることが分か る。
 本来、青にしても色素が薄いはずのミルハウストの瞳は、わずかな光を取り込んで、なお黒々と沈み込むような色を呈しており、その視線の威圧感にサレは どこか身の竦む思いをした。
「何、だよ…。」
 見据えてくるミルハウストの瞳の中に込められたある意図のようなもの。
 それは、あまりにも覚えのある感覚で、そしてそれを瞬時にして感じ取った自分を、これ以上無いというくらいに嫌悪した。
 この部屋に呼んだとき、二人きりになったときにミルハウストが纏う雰囲気。
 いとも簡単に自分を拘束し、動けなくするもの。
 そしてそれが自分に何を要求しているかということ。
 思い知らせてなおも絡みつくようなミルハウストの視線に耐えられず、サレは続いて差し出されたミルハウストの腕を、まるで捕らえられることを嫌がる猫の ようにかわした。
「やめてくださいよ。ホラ、姫様のところに行かないんですか。会いたいってさ。行ってあげなよ。ホラ、手紙うれしかったって。花をありがとうございま す、って。言って、…抱きしめてあげなよ?。」
 けれどサレの言葉を無視し、ミルハウストの腕が、まるでサレの逃げ道をふさぐように差し伸ばされた。
「サレ。」
 低く、囁くような、それでいてよく通る声に呼ばれ、そこに生じた一瞬の隙に乗じるように、ミルハウストは、サレを壁際に追い詰めるような形で覆い被さ り、抱きすくめた。
「…ちょっ、と。やめてくださいよ。あなたには目的があるんでしょう。ホラ!、こんなところで遊んでいる場合じゃないでしょうが。せっかくのチャンスじゃ ないですか?。フイにしたら姫様悲しむよ?。」
 言いながらミルハウストの腕の中で、サレは自分の手足のなかに細かい震えが沸き起こるのを感じた。
 それは、まるで優柔不断なくだらない男のようなミルハウストへの怒りのためなのだと思い込んだ。
 するとミルハウストが、つい、とサレから腕をひいた。
「悪かった。こんなものを置いたままにしたのは私の不調法だ。」
 あっさりと言われた侘びの言葉にサレは思わず返す言葉を失った。
 見下ろしてくるミルハウストの瞳の中に宿る昏いものは、何か、不可解なひかり方をしている。
 まるでミルハウスト自身、これがひどく不本意であるのだと言わんばかりだった。
 言葉は謙虚で口調にも侘びの気持ちが込められている。
 話の矛先が妙な方向に捻じ曲げられたような気がする。
 サレが今欲しいのは、そういうミルハウストの優しい言葉ではなかった。
 こんなふうに誠意ある態度などではなかった。
 この部屋にいる、将軍閣下の仮面を外した『ミルハウストの本質』を知ることが許されている唯一の人間が、自分であるのだと思いたかった。
 そしてそう思えば思うほど、サレは後に退けなくなる。
 辛辣に嫌味でも言って、こっちから部屋を出ていってやればいいのだろうか。
 そうも思ったが、逆にそれでは何もならないようにも思えてくる。
 まるで、あのミルハウストに自分が優しく譲られたような形をもって、この場を立ち去ったのでは意味がない。
 サレは今、目の前に居る、『謙虚で温和な顔をした将軍閣下』を否定し、ひどく傷つけたい衝動を抑え切れなくなった。
「…ふん、お偉いさんは、すぐにそうやって何でもごめんの言葉一つで相手を懐柔できると思っているんですねえ。高貴な方々の無難な人づきあいってやつです か。でもさ、今のあなたは、そういうのじゃないよね。只の面倒くさがりの無精者だよ。…まあ、分からなくもないですけど。こんな遅くまで鎧も脱がずに働い て、クタクタだってのに、これ以上、姫様の無邪気で無神経なお呼び出しに付き合ってあげなきゃならないことが、すごく面倒だってことがさ。だって一歩でも この部屋から出てしまえば、あなたは将軍閣下であって、周囲に常に目があって、ろくにプライベートも無い上に、さらに周囲に神経尖らせて、夜に姫君を訪ね ることが、立場的にもどれほどハイリスクかってことくらい、僕にだってよく分かるよ?。…でもさ、やるしかないよね。何、閣下なら大丈夫ですよ。せっかく 姫様が健気にも勇気を出して誘って下さっているんですし。陛下だって、あなたを信頼しきっているみたいだし。…野心のある身としては、チャンスは余さず利 用して、使えるものは何でも使って、媚でも何でも売ってさ、うまいことやらなきゃ…?。いいんじゃない?。そういうのも立派な上昇志向って言うんじゃない んですか。僕は嫌いじゃないなあ。それにその方がずっとあなたらしい。…ねえ、ミルハウスト。」
 そう言って、サレは視界の端でミルハウストの反応を窺いながら哂った。
 そのサレの言葉と作り笑いに、ミルハウストの表情がすっと変わった。
 そして、次の瞬間、ミルハウストの右掌がまるで掴むような勢いで、サレの顔の真正面に突き寄せられた。
 けれどその急な勢いをもって至近距離に寄せられた右の掌からくる圧迫感にも、サレは、ふん、と言って顔を逸らした。
「…何のつもりだよ。まさかその程度でこの僕を脅したつもり?。言っておくけどね、ミルハウスト。今、あなたは丸腰かもしれないけど、僕はフォルスが使え るんだよ。僕が怖くない?。僕を怒らせれば、あなたを殺すかもよ?。」
「今夜は随分とおしゃべりだな。お前の減らず口は愉しいが、これ以上は興が削がれる。…いっそ斬りとってやろうか。」
 低くそう言って、ミルハウストは指でサレの唇をなぞった。
「やれるもんなら、やってみろよ!。」
 言うと同時に、サレの瞳の中に、偽りでない殺気が込められた。
 しかしそれすらミルハウストは、いなすようにやり過ごす。
 そしてミルハウストは、サレを追い詰めるように右肘で壁につき、吐息がかかるくらいに近くに顔を寄せ、同じ高さで視線を合わせた。
 真正面に視線を合わせた至近距離にある二人の間を、重く凍るような沈黙が隔て、その鋭い刃先を向けられたような空間の向こうで、眼前の男の口元に明らか に作ったものと解る柔和な笑みがゆっくりと浮かぶのをサレは見た。
「…お前は私に何を期待している?、一体何を望んでいる?、お前を部屋に呼んだ私の何が不満なのだ?。言ってみろ。…聞いてやるから。」
 優しげに、どこか潜めるような声音で吐かれたその言葉にサレは一気に頭に血が昇るのを感じた。
 そしてこの強烈な怒りが全部鋭利な刃物のようになって、自分の中で渦巻くのを覚えた。
「ふざけるなッ!。」
 そう怒鳴った直後、顎を乱暴に掴まれ、すぐに唇が重なった。
「う…。」
 言葉は口付けに千切りとられ、同時に腕を拘束される。
 両腕は背後の壁に暴力のように縫いとめられて、まるで吐息そのものを呑み込むように重なった唇からすぐに舌が入り込み、それはやすやすと歯列を割って内 部を冒してくる。
 なぶるように舌が口腔内を動き回り、続いていくばくかもなく、サレは長椅子の上に押し倒されていた。
 縺れ合うようにして倒れこんだ長椅子の上の、積み重ねられていた図面や書類、そんなものがばさばさと乾いた音をたてて床の上に滑り落ちた。
 身体の上に伸しかかったミルハウストの掌が、服の上から這い回る。
 唇を重ねたまま、知った箇所を探り当て、ことさらそこばかりを弄るようにして、ようやく唇を開放されたときには、もうサレの吐息は乱れていた。
 抱きすくめられ、互いの頬が触れ合う。
 髪の中に指が潜り込み、そのまま髪をすくい上げられ、それに唇を寄せるミルハウストをサレは信じられないもののように見た。
 耳元に息がかかり、続いて耳に温かいものが触れた。
 その濡れた感触に、それが舌であることを知ると、途端に腰の中に甘いうずきが走り抜け、それと同時に、跳ね上がるような官能を残したまま、押し当てた唇 が耳を過ぎていくのが分った。
 けれど喘ぐようにしてサレは顔を背け、最後の抵抗のようにミルハウストの胸を強い力で押した。
「何やっているんだよッ。ミルハウスト!。僕の話はさっきから全部無視ってわけ?。それとも何も言わずに、とりあえず一回済ませてからってこと?。自分勝 手なんだよッ。あなたは。」
 その言葉にも、ミルハウストは抱き締める腕の強さを少しもゆるめなかった。
 唾液をふくんで濡れた舌は耳元をよぎり、それは、するりと首筋に落ちた。
「…ッ。」
 熱を含んだ吐息が漏れ、サレは思わず瞼を閉じた。
 身を捩じらせ、身体が重なった状態から逃れようとしても、ミルハウストは抵抗を封じることそのものを愉しむように腕の力を強めてくる。
 何が誉れ高き将軍閣下だ。
 忠義面してその実、誰よりもこの国に背いている謀反人。詐欺師が。
 誰も彼もが騙されている。
 馬鹿馬鹿しい。
 そう思いはしたが、それでは一体何にこんなに苛立つのか解らなかった。
 ミルハウストの本心を図りきれない自分か。
 中途半端に野心をちらつかせておきながら、その実、本音の部分においては、何も見せず、奥底にしまいこんだままはぐらかし続けるミルハウストか。
 どうでもいいと思い切れない自分にたまらない嫌気を覚える。

『…お前は私に何を期待している?。』

 期待しているさ、ミルハウスト。
 おそらく初めて出会ったときから。
 このまぎれもなく、自分と同じ匂いをもつ、真の意味においてどこにも属せない男にどうしようもなく。
 国中の信頼と名声を一身に集める将軍の仮面の奥に、とてつもなく、どす黒い野心をひた隠し、王国の根底たる体制の破壊を企んでいる男にどうしようもな く。
 けれど苛立ちの感情を押しのけて、それ以上に強く、今こうしてミルハウストと会っているのが自分であるということに。王女の誘いをすっぽかして、最大の チャンスともいうべきものを放っておいて、抱き合っているのが自分であるのだということに歓喜を覚える。
 あの手紙の主に教えてやりたいよ!。
 そんな幼稚で、一番嫌悪する類の、甘ったるい悪意すらも頭をよぎる。
 サレはミルハウストの背に手を回し、その身体をかき寄せる指に力を込めた。
 今自分を突き放してでも、その野心に忠実に、今アガーテ姫に会いに行けばいいのだと思いながらも、誰よりもこの男の近くにいるのは、自分なのだと思う、 相対する矛盾した感情を抱えて。
 









 To be continued…







2005 0210  RUI TSUKADA



 うちのサイトのミルハウストはカレギア王国の世襲制や身分重視の階級社会を嫌い、これを根底から作り 変 え、最終的には、カレギアを乗っ取ることを画策している野心家であります。よってミルハウストにとってアガーテ姫も利用する道具です。
 ミルハウストの野心をサレは一応知っています。ミルハウストもサレを同属視しているといったところでしょうか。
 でもって、サレは外では「将軍閣下」と呼びますが、本質ミルハウストに対しては名前で呼びます。

 でも、決してツーカーというわけではなく、やはり本質的なところではすれ違っている模様。



 こんなん、読んで下さっている方、本当にありがとうございます。
 妄想が暴走してすまんです…。

 き、気持ち悪くならないですか…?。←結構心配。