『花(前編)』 







 窓の外で風が鳴いた。
 大気は、夏の名残を留めた押しつつむような湿気を含んで、やや重い。
 ガラス窓は、室内の二人分の体温を吸い込んで、わずかに曇りを帯びていた。
  雨のにおいがする。
 寝室の東側の大きなガラス窓に、木々の影が映り込み、城壁のすぐ横に植えられている落葉樹の、やや伸びすぎた枝が窓越しの常夜灯の光を浴びて、黒々と大 きな影を落としていた。
 ときおりの突風に煽られて枝が揺れ、その晩夏の盛葉が擦れるざわめきは、そのまま湿った大気に吸い込まれて消えた。
 薄く目を開けば、脳に血が一気に駆け上がる感覚と、こめかみでやけに鮮明に響く自分の鼓動の音を聞いた。
 夜半、ふいに目を覚し、サレは隣で眠る男の姿を確認した。
 息をひそめるようにして、隣で眠るミルハウストの寝顔を見た。
 その確かな対象を確認して、夕べ共にした互いの熱の名残を感じても、いつも苛立ちにも似た焦燥に襲われる。
 きりきり、という傷がつく微かな音を、耳元で聞いた。
 それは、胸の奥に小さな引っ掻き傷がつけられるような錯覚だった
 細く紅い糸のようなその傷は、いく筋もの赤く長い線となって残った。
 幾度も聞いた、この不快な音がいつからか耳につくようになった。
 それは胸の奥に生じ、そこから喉を這い上って、最後に耳元に届くようだった。  
 この音を聞くのは、これで何度目であろうか。
「…情けない。」
 自己嫌悪と、そして出所不明な焦燥感からくる胸の中の不快な淀みを吐き出すように、そして不自然にこわばった喉を宥めすかすように、もう一度、短く溜め 息をつく。
 その細くて赤い引っかき傷の錯覚、それはこんなふうに夜半、中途半端に目覚めてしまうと必ず現われ、澱みのようなものを植えつけていく。
 そして次第に確実に、傷はサレの身体で増殖し、暗く静かに沈積していくようであった。






 ##

 ヒューマとしては本来有り得ないはずの強大なフォルスが発現し、その能力を買われてバルカに連れて来られ、サレは、成り行き的に、フォルス能力者で構成 される『王の盾』に所属することとなった。
 サレとて通例どおり、最下の兵士として入隊したのであるが、その潜在的な能力は、部隊の中でもやはり突出しており、サレに対する扱いは、入隊当初から特 別なものであった。
 全て上の意向で決められたことなのであろうが、通常の訓練の他にも、別途特殊なカリキュラムを組まれ、フォルスの開発訓練を受けさせられた。
 日中は他の少年兵らに混ざって訓練を受け、それが退けても、宿舎へ帰ることなく、深夜近くになるまで特別なフォルスの訓練を受ける。
 自然、他の『王の盾』の兵達とは距離を置くこととなり、訓練のみに明け暮れる日々を送るサレは、やはりここでも一種異様な、周囲から浮き上がった存在で はあった。
 しかしここに来るまで、理不尽な差別とそれに基づく虐待の日々しか知らなかったサレにとって、そんなことはどうということもなく、訓練をこなしていくに 従い、『嵐』の能力は驚くほど急速な成長を遂げ、やがて馴染んだ武器のように自在に操ることができるようになった。
 かつては『化け物』と、『悪魔』と呼ばれ続けたフォルス能力。それがこの『王の盾』に入った瞬間、サレにとっては生きていくための術となり、同時に誇り となった。
 逆に言えば、フォルスが無ければ、ここにもサレの居場所は無いということなのであるが、その力はすばらしいと、お前は稀に見る能力者だと。繰り返しそう 言われ続ければ、自負を感じ、生まれて初めて自分の居場所が出来たと、自分で道を開くことができたのだと、そう思えたことも事実である。
 『王の盾』という機関が、その実のところ、いかにヒトとして嫌悪すべき任務をも遂行するところであれ、サレにとってはどうでもよく、自らのフォルス能力 を評価されて、その能力をもって自分が必要とされるのならば、それを無くした自分など、もう考えられなかった。
 そして『王の盾』に所属して二年ほどたったころには、任務にも慣れ、そのフォルスの強大さをもって周囲に認められ、やがては正規軍にも、サレの名が知ら れるまでになっていた。
 そんなある日、サレは『ミルハウスト将軍閣下』からの呼び出しを受けた。
 ミルハウスト将軍閣下とは。
 その指揮官としての実力、剣の腕もさることながら、王家の縁戚に当たるという貴族の中でも抜きん出た家柄の出身で、国王陛下の信頼も厚く、二十歳そこそ この若さで軍のトップに上り詰めた人格者であるのだと。
 それがバルカに来てからずっと、サレが伝え聞いていた評判だった。
 まるで別世界に居るような、『将軍閣下』が、何故、自分を?。
 任務や王城での生活にもようやく慣れ、組織にもやっとその力を認めてもらえるにいたったところで、所詮、未だ『王の盾』の一兵士に過ぎないサレにとっ て、まさに雲の上の存在である正規軍の将軍閣下からの呼び出しに、内心、夢見心地であったことも否定できない。
 しかし、その将軍閣下の部屋でサレに告げられた言葉は『一夜の相手』だった。
 呼ばれた部屋で、投げかけられた非情な言葉に絶句したサレに一言の反論の余地すら与えられなかった。
 肘掛のあるソファーから立ち上がりもしない相手に、いきなり服を全部脱ぐように命令口調で言われたときには、一瞬、頭の中が真っ白になった。
 けれどサレとミルハウストとを隔てる間にある空気のようなもの、それがサレに今、告げられた言葉が何を意味するものなのかを伝えてくる。
 この国家における階級社会は絶対の秩序。
 特にサレのような、その『呪われし』フォルス能力をもったヒューマであり、奇麗事でなくここより他に、行く当てとてない異端の者にとっては、それは言葉 以上の意味をもつ。
 それを知ってて言っているのであれば、眼前の男は大した暴君だったかもしれない。
 しかしそれがいかに理不尽なものであれ、今現在、正規軍の頂点に君臨する者の言葉を手際よく断り、無難にやり過ごす術を、16歳になったばかりのサレは 知らなかった。
 俯き黙り込んだサレに、『将軍閣下』は次なる行動を視線だけで促してくる。
「…ひとつ、お聞きしてよろしいですか。」
 覚悟にも似た勇気をもってようやっとサレはそう言った。
「何だ。言ってみろ。」
 眉一つ動かさずに短く言われる。サレは沸き起こる緊張感に小さく息を吸い込んだ。
「僕の任務には、…こういうことまで入っているんですか。」
 ほとんど意地だった。
 懸命になって皮肉まじりの口調を作って聞いてやったが、語尾は屈辱に上ずっていた。
「上の意向に沿うように心がけることを、お前が『任務』と呼ぶならば、そうだ。」
 こちらには選択肢も無いのだと言わんばかりの口調は、ひどく横柄な印象だった。
 思わずきつく見返したサレの視線にも、表情ひとつ変えない。
 たしかに噂に聞いていた通り、ぞっとするほど印象的な男だと思った。
 その圧倒的な存在感、威圧感。本当にこれが、二十歳そこそこの男なのかと思わせられる。
 正規軍のみならず、『王の盾』にも、この男の将軍としての能力に心酔している者は多い。
 その端正な容貌も相俟って憧れる女達も多いのだと聞く。
 けれど今、向かい合った男から受ける不遜な印象は、これまで伝え聞いていた噂とは、かけ離れたものだった。
 サレは半ば自棄になって、ふうっと息を吐き、肩をすくめてみせた。
「・・・ふうん、なるほど。あなたは随分と差別的な方なんですねえ。僕が聞いていた方とは大違いだ。誉れ高き噂の将軍閣下がどんな方なのかと思えば、実際 のあなたはとんだ差別主義者だったと言うわけだ。」
 あからさまに失望した、そうはっきりと口に出したサレにも、眼前の男の顔色は少しも変わらなかった。
「お前が私に関してどんな噂を伝え聞いていたのか、私は知らないし、興味もない。だが悪いが私はいつも下のものを差別して生きてきた。それから私は人にも のを頼んだことはない。ただ命令するだけだ。それが私の仕事だからだ。」
 さも当然といったふうにそう言って、その過ぎるほどに整った顔に、笑みを浮かべてみせた。
 ミルハウストの言葉と笑みの冷たさに、サレは再度返す言葉を失った。
 握り締めた左右の拳は怒りのために小刻みに震えてきた。
 退屈しのぎの玩具になれって言うのか。いっそ、そう怒鳴ってやろうかと思ったが、例えそうしたとて、サレにとっていい結果になることなど一つもなく、ま た、女のように泣き出してやめてもらうこともできやしない。
 このバルカでのミルハウストに関する評判は、たしかに輝かしいものばかりであったが、サレはそれとは異なる『ある噂』のようなものも聞いたことがあっ た。
 『ミルハウスト将軍は、このカレギア王国の「古い体制」を一掃しようと目論んでいる。』というものである。
 何代も前から王国の重職を独占するような名家の出身でありながら、出自をもって難なく地位や能書きが得られるような王国の制度を心底軽蔑しているのだ と。
 能力も無いくせに、王国の中枢で大きな顔をしている貴族連中を端から舐めきっているのだと。
 そしてその、清廉過ぎる苛烈な将軍を良く思わない重臣や貴族も多く、常に王国は対立の火種を抱えている、というものだった。
 何にせよ、そんな王国中枢の事情など、未だ『王の盾』の一兵士に過ぎないサレにとっては、到底かけ離れた世界での、あたかも天上の人々の話であったのだ が。
 今、王国内部にくすぶる揉め事の中心に居るという、当のミルハウストと対峙して、その王国にはびこる旧体制に一歩も退かない自信の源は、ミルハウストの 周囲に漂う支配者の気配であり、それがミルハウストという人間の輝きそのものであるということを思い知った。
「…。」
 サレは、きゅっと唇を噛み、諦めたように俯き、結局、それ以上何も言い募ることもできず、言われるままに従った。
 サレはミルハウストの見ている前で着ているものを全部取り去り、裸になった。
 烙印の火傷痕を隠した右手袋だけは外さなかったが、それに関しては、特に何も言われなかった。
 知っているのかもしれなかったし、興味が無いだけなのかもしれなかった。
 真正面から向けられる射るような視線に耐えようと、せめて顔を斜めに逸らしても、明るいライトの下に晒された状態ではあまり意味を成さない。
 わざとなのか、そのままの状態でしばらく放っておかれたときには、羞恥にたまらない思いをした。
 散々に裸を見られたあと、ようやくベッドに入れと言われたときには、膝が震えた。
 広いベッドのシーツの上で組み敷かれて、押し伏せてくる大人の男の重みと、その行為に対する恐怖に耐えようと固く目を閉じた。
 もの慣れないサレの様子に、閉じた瞼の向こうから、呆れたような短い溜息が降って来た。
 肌に掌が這い回り、狭い箇所に指が入り込む。
 うつ伏せにされ、他人に触れられることなど考えもしなかったところを暴かれ舌でなぞられたとき、サレはシーツを噛み締めて懸命に声を押し殺した。
 時間をかけて身体を慣らされても、繋がるときの苦痛はやわらがなかった。
 行為は身体を傷つけ、最中はひどい痛みと、そしてそれとは比較にもならないくらいの、とてつもない嫌悪感しか湧かなかったが、相手が随分慣れているとい うことだけが、せめてものの救いだった。
 身体を割り裂かれるような痛みのショックで半ば気を失ったようになって、終わったあと、みじろぎもできずにシーツの上に横たわった身体を、悪びれもせず に抱き起こして、お約束のように、優しく髪など撫でられたときには、正直虫唾が走った。
 いたたまれずに部屋へ戻ろうとして、シーツを払いのけてベッドから立ち上がり、ふらついた身体を支えられたときには、思わずその腕を乱暴に振り払ってい た。
 しかし払いのけたときに当たった音の大きさに驚いたのはむしろサレの方で、拒絶されるということ自体が珍しく、何か妙な興味でも覚えたらしい『将軍閣 下』は、「お前は存外に楽しい。夢中になりそうだ。」と冗談にもならないことを言ってのけた。


 そしてそれ以来、しばしばミルハウストはサレを部屋に呼んだ。
 最初のうちこそ、これは組織に身を置く以上、どうしようもない。ここの他に行くあても無いのだから、ある程度の我慢は仕方ない。
 それにどうせお偉いさんの気まぐれの暇つぶしなのだから、そのうち飽きてくれるだろう。
 そう考え、自分を無理に納得させていたが、こうも回が重なれば、関係はなし崩し的に生活の中に定着した。
 諜報や暗殺等、大国の暗部を常の任務とする、文字通り『王の盾』である部隊に属し、到底ヒトとして褒められたものではない実績を評価されて、やがては 『四星』と称されるようになっても、将軍閣下に呼ばれれば、サレはこれは義務なのだと、せいぜい冷めたふうを装って部屋に赴く。
 ヒトのぬくもり、ヒトの心。そんなものはまやかしだ。
 ヒューマの身でありながら、強大なフォルスを備えた呪われたこの身を受け入れる人間など、本来存在し得ないはずで、思い起こせば、疎まれ、蔑まれてきた 記憶ばかりだった。
 いつだって一人で生きてきた。
 そしてそう思うことによって生き残ってこれたのだ。
 けれど。
 抱かれ続ければ、微量の毒が身体を次第に侵食していくように、行為の中に、立場上や職務の割り切りとは別のものを見出そうとしている自分が居る。
 ミルハウストの持つ傲慢さ、王国の旧体制を軽蔑し、大貴族でありながら貴族社会というものを舐めきり馬鹿にし、それらを一掃しようと本気で考えている苛 烈な清廉さに影響され心酔していく自分が居る。
 それを懸命に否定しようとしても、どんなに巧妙な嘘とて結局のところ、自分だけは欺けない。
 これまで望むべくもなかった、人の温もりや、どこか仲間意識にも似た『同属の匂い』に触れた結果、わずかに芽生えた他者への執着こそ、実は自分が心から 望んでいたものではないのか、という感覚に襲われるのだ。
「馬鹿馬鹿しい。くだらない。…有り得ない。」
 正規軍ならいざしらず、『王の盾』の一員である自分は、ちょっと頭を冷やして考えれば、所詮、駒の一つであり、その命すら消耗品なのである。
 ミルハウストとて当然それを解っているのであろうし、うっかり信用して裏切られるようなことだけは真っ平だった。
 サレは、意図的に気配を抑えてするりとベッドから抜け出した。
 寝室の東側を向いた大きな窓の所まで歩いて行って、なんとはなしに外を見やり、そのまま、窓のガラスに、くったりと身を寄せた。
 もたれかかるようにすると、ガラスに頬が触れ、そのひやりとした感触に頬の体温を奪われて皮膚がわずかに痺れた。
 ガラス越しに見える空は、うっすらと黎明の薄赤を帯びて、東の地平から、うすぼんやりと、バルカの街の家々の輪郭を、藍色に浮かび上がらせていた。
 現実味に希薄なほどに、静かな光景だった。
 まるで、夢の中にいるようだった。
 少なくともこの部屋に居るときだけは、自分にも、安らかさと錯覚する『ひとりではない』世界が与えられている。
 それは、到底、あてにもならないくらいに浅くて、頼りないものであるのだが、やはりこの夢の終焉を、息をひそめて恐れている自分をサレは嫌悪した。






 ##

 今夜もミルハウストに部屋にくるようにと言われていた。
 たまには一緒に食事でも、と形式めいた誘いも受けたが、どうせすることは同じなんでしょう、と思いきり嫌味を言って突っぱねてやった。
「明日は非番なんだろう。」
 辛抱強く背後から、苦笑まじりに声をかけられたときには、その言葉の中に、子供を宥めるときのようなニュアンスを嗅ぎ取り、それがますます気に食わず、 思わず『そういうことは、秘書課の女性たちにでも言ってあげたらどうです』、という言葉が咽まででかかった。
 しかし、この言葉を頭の中で反芻すれば、随分自分がみじめに思え、サレは急いで言葉を飲み込んだ。
 いつものように一人での食事を終えて、やはりお決まりの手順で身支度を整えて、サレはミルハウストの部屋へ向かった。
 夜勤の者を除き、殆どの者は、一日の任務を終えて、部屋に戻っている時間である。
 役職の性質上、勤務時間が不規則な自分と違い、正規軍の朝はいつも早い。
 それを統括する将軍閣下ならなおのこと。
 そうそう遅くまで遊んでいられないだろう。
「今日はせいぜい一回戦で終わりかな。」
 どうでもいいけどさ、といったふうにサレはわざと下品な言葉を口にする。
 表面上だけでも投げやりになれば、少しだけだが、気が楽になる。
 兵舎の一番奥の、長い渡り廊下の突き当たりの部屋がミルハウストの私室だった。
 ノックをしようとした手を途中で止めた。鍵は渡されている。
 サレは右手にとった鍵をどこか煩わしい思いで見詰めた。
 この鍵を渡したときの、ミルハウストの顔は決して忘れられない。
「これはお前が持っておけ。」
 あのとき、静かに低く告げて、半ば強制するように掌の中に落とし込まれた鍵の感触にサレは戦慄した。
 鍵を渡すこと、そのものが意味する内容を、成立する関係を思い知らせるように、ミルハウストはサレを見下ろし、目の端だけで浅く微笑んだ。
 サレはひとつ舌打ちをし、わずかに首をふって、鍵を差し込んだ。
 ドアノブに手をかけたところで、背後から人が近づく気配を感じた。
 振り返ると、暗く灯りの落とされた長い廊下を長身の男が歩いてくるのが分った。
 自分の姿を視止めたはずなのに、別段急ぐ様子もあわてた様子もない。
 その、さも当然といった男の態度は不満だったが、近づき、そして目の前に立たれたときの威圧感には、いつも圧倒される。
 まだ鎧を脱がないのか、こんな時間なのに。
 サレはミルハウストを見上げてそう思った。
 私室から一歩でも出ればミルハウストは一個人ではなく、大国の軍隊の長たる将軍であるということに徹底する。
 その生真面目さにサレは呆れとも、感嘆ともつかない感情を抱いていたが、今、兜を外したミルハウストの素顔は、長く柔らかい金髪に覆われて、見とれるほ ど美しいと思った。
「…ああ、まだ軍部にいたんですか。さすが、…閣下は本当に仕事熱心ですねえ?。」
 内面をその人を食ったような口調に押し隠してサレは言った。
「時間、無いんでしょう?、僕が部屋に入ってもよろしいでしょうか?。将軍閣下。」
 開き直ったふうに言い放つサレにもミルハウストは表情すら変えない。
「部屋に入って、適当に座ってろ。私はシャワーを使うから。」
 そう言い、先に立って部屋に入ったミルハウストに肩をすくめるようにして、サレも部屋に入った。





 To be continued…












2005 0210  RUI TSUKADA



 サレが『王の盾』に所属した時点で、ミルハウストは、既に軍の幹部の 地位にありました。
 それはカレギアが階級社会であり、ミルハウストが名家の出身であるということが大きい。
 
 何にせよ、当初、別世界にいるようであったミルハウストとサレは、出会い、以後何年にもわたり、そーゆー関係に(笑)。

 生まれも育ちもまるで異なる二人ですが、この二人を結びつけるのは、まぎれもなく『同属の匂い』。
 サレもその能力のため、いつも独りでありましたが、ミルハウストも、組織の中で『支配者』になることを目論むのなら、やはり相当な『独り』でありましょ う。
 
 次回、『花(中編)』
 ミルサレで喧嘩(?)とヤオイ…。