『The contract (0)』


帝国皇帝の第一子、第二子の処刑から半年。
服喪を終えた第三子ヴェインは、帝国軍・司令部に就くこととなった。
それは、父皇帝グラミスの意向であり、帝位を磐石にするためのシナリオではあったが、
息子ヴェインは、父皇帝とは別の独自の権力機構を創り上げることを画策していた。
ソリドール家私兵で側近のゼクトを公安局にジャッジ・マスターとして送り込むことに成功し、
続いて、東大陸戦線の裏方の立役者であり、帝国兵器開発部門の責任者・シドを
自陣営に引き込むべく、行動を開始していた。






シドは、皇帝グラミスからの資金援助を受け、その管理下で兵器開発研究に従事していた。

東大陸戦線の終結と同時に、皇帝グラミスとはやや疎遠にはなってはいるものの、
厳しい階層社会の中では、権力者に付く以外、研究者に生きる道は無かった。
 
そんな中、皇帝グラミスの第三子・ヴェインが、自分に付かないかと誘いをかけてきた。
軍政の天才との呼び声も高い第一位皇位継承者ではあったが、処刑事件以来、皇帝グラミスと
微妙な関係だとの噂もある皇子からの申し出に、シドは、大きなリスクを感じていた。