『君主論(その3)』

世界中、いつでもどこでも、ヴェイン様の行動は、元老院議員の視線を釘付けにする。


 
強く賢く美しく育ててくれてありがとう (by腐女子)。


君主論に曰く。
自らの力量によって君主となった人は、国の征服に際して困難がつきまとう。
しかし、国を維持していく際には、容易にそれを為しえる。


 一見すると、あたりまえのようなことを言っているように読める。
 自らの力量により君主となったような、元々能力の高い者ならば、
その後、国を維持するに際しても、力を発揮し、その手腕によって
治世を築いていくであろうことは、当然のことだからである。

 君主論の著者・マキァベリも、このような確固たる実力でのし上がった
君主には、最大限の評価を与えている。

 だが、この文言のポイントはそこにあるのではない。
 自らの力量を示しながら君主となった人は、それまでの課程において、
多くの政敵をなぎ倒しながら、それらに勝利してきたのであるから、
必然的に敵が多いのだ。
 すなわち、「征服の際に困難がつきまとう。」とは、このことを意味している。

 そして、多くの敵を制圧して君主となった以上、
並み居る政敵とは全く別の、独自の方針を打ち出し続けていかなければならないのである。
 これが実力によって君主となった者が立ち向かうべき課題なのである。

 また、君主論では、「新しい制度を独り率先して行おうとすることほどこの世で困難なことはない
と言っており、自らの実力により君主となった人であればあるほど、それまでの旧体制で
美味しい思いをしてきた連中はもとより、改革を望む者たちとも、必然的な温度差が存在することから
国を完全制圧するまでは多くの困難に出会うのは宿命であるとしている。

4代続けて帝国皇帝を輩出しているソリドール家は、その独自の方針として、
軍部との結束を高め、軍事力を強化するという方策を打ち出している。

 特に皇帝グラミスの周辺諸国の併合政策に象徴される軍拡による国力の増大、
 そしてさらにヴェインは、公安総局を自らの支配下に置き、
各局の長ジャッジ・マスターを側近(私兵)と位置づけ、帝国軍の重ポストを割り当て、
自らも軍最高司令官に就き、公的にも明確な主従の下で彼らを統括する。
 すなわち自国の中にあって独自の権力組織体を創り上げながら、
帝国の政治方針を明確化し、同時に議会対抗の優位性を確保しているのだ。

 そしてこれは、唐突に始まった方針ではない。
 皇帝グラミスは、第三子ヴェインに類稀な軍才があることを見込むや、
明らかに幼少から専門の英才教育を施し、軍司令官、政敵を打ち滅ぼす
「ソリドールの剣」としての資質を磨き上げた。

 まさにソリドール家歴代の方策が見事に第三子・ヴェインに結実している。
 最強の軍事力という、政敵が決して持ち得ない利点を最大限に利用し、
更にはドラクロア研究所により最新兵器開発を行い、
もはやライバル国・ロザリアを圧倒する無敵のアルケイディア帝国を創り上げ、
戦勝の実績は国民に対する強烈な説得力となり、ソリドール支持を確実にしている。